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私の犯してしまった罪のカタチ

プレシアさん主体のSSです。
一期、過去の回想のような語りでのSSです。
ネタバレを含みます。
ネタバレを避けたい人は下を見ずにすぐにバックオーライ。
それでは「私の犯した罪のカタチ」どうぞ









「フェイト、聞きなさい」

「私はあなたのことが……」

「大嫌いだったの」





私は、犯罪者だ。
研究員だった私は、ある事故ですべてを失った。
自分の携わったプロジェクトの引き起こした事故。

これによる被害はずいぶんと大きなものだった。
被害者は3ケタに及ぶ。
視覚から体へダメージを与えるものが多く、大人はひどければ呼吸困難、短時間の体の硬直などが見られ、小さい子に至っては心臓の機能停止。
死者も出た。

事故当時、私はとある研究チームの責任者だった。
何日も働きづめ、残業はざら、徹夜だって何日あったかわからない。
納期の短縮やちがう研究チームからの派遣などで時間が詰まっていたからだった。
この実験をそれでも押し通したかったのには理由がある。
研究者としての技術的進歩にかける想い。
私も研究者のはしくれだったからそんな思いがあった。
けれどそれだけではなかった。

たった一人の家族、アリシアのためだ。
私の時間がなくてまだ小さいあの子と一緒にどこかへ旅行に行く、という経験をしたことがない。
このプロジェクトが成功した暁にはささやかながらボーナスと、幾日かの休みが報酬として提示されていた。
普段から帰宅の遅かった私にとっては望ましい好条件に見えた。
だが、納期とプロジェクトの計画の工程が見合わない。
アリシアと一緒の時間がほしかった私だったが、よっぽどの無理をしてまで引き受ける案件ではなかった。
しかし、上司は私の拒否を伝える言葉に首を縦に振らず、強引にこの案件を押しつけた。

それでも私は引き受けた案件だからと、率いていたチームにプロジェクトを任されたと伝えて膨大な作業に取りかかった。
けれど上役は協力という名の妨害で私を苦しめ、時間を削っていった。
アリシアと会える時間も朝だけだったというのに、その時間すらなくなった。
絶対にこのプロジェクトを成功させて休暇には二人で旅行に行くんだと、その気持ちだけが私の力だった。

そしてあの日、事故が起きてしまった。

原因は上役の派遣してきた新人による機械の調整の不備。
これによって周囲200mほどの被害を出した。
その中には、奇しくも私の家も含まれていた。

機械の被害の拡大を止めた頃、私たちは身の周りへの影響がどこまで出たのかと確認を急いだ。
そして、私は家に戻った。

家は、何一つ変わっていなかった。
光に含まれる情報が無機物を壊すことはない。
扉を開け、辺りを見回す。
少し汚れた跡のある壁、小さな傷のついたテーブル、色味が薄くなったソファ。

そのどれもが不安をかきたてる。
すべて、あの子との思い出が詰まったものばかり。
そうだ、あの子の無事をまだ確認していない。

アリシア

必死に名前を呼んで姿を探した。
居るなら返事をしてほしい。
お願いだから、お母さんを安心させて……。

一階の奥によく光の入る物干しスペースがある。
そこに、あの子は倒れていた。
疲れて眠っているかのように、体を洗濯物を入れたかごに預けて。
今にも目を開けて私のことを呼んでくれそうな顔で。

……アリシア

私の体は嫌な想像を振り払うように駆けだしていた。

起きて。
早く帰ってこれたから、洗濯物を一緒に干しましょうよ……。

やさしく肩を叩いても、返事もなく陽だまりの気持ちよさに眠っているようにしか見えない。
なのに、あの子の頬は冷たいままで、天使のようなやさしい笑顔を二度と見せてくれることはなかった。






私は、あの詰め込みすぎた仕事環境から情状酌量を得て執行猶予付きの判決をもらった。
そして、会社を辞め、あの男に出会った。

ジェイル・スカリエッティ

あの男から研究者として禁断のプロジェクトを持ちかけられた。
だが、今の私にはのどから手が出るほど欲しい計画だった。

プロジェクトF

人間を作る計画。
研究者の倫理を外れるものだったが、またあの子に会うことができる。
その美点に私はノーと言えなかった。

何度も実験し、失敗。
これを繰り返し、ようやく一人成功したかと思われるものができた。
この子がアリシアなんだと、私はうれしくなって今まで堪えてきた感情が熱い雫になってほほを流れるのを感じていた。

この子と一緒におでかけしよう
この子には寂しい想いなんてさせないように
この子はアリシアなんだ
また私の元に戻ってきてくれたアリシアなんだ

けれど、すぐに違和感が表れた。
あの子の記憶をインプットしたはずなのに何もかもが違った。
癖も、利き手も、私の呼び方さえも。

あぁ、この子はアリシアじゃない
失敗作だ

押し寄せる絶望と敗北感。
こんな失敗作は不要だった。
けれど魔力資質は高かったから駒には使えるだろうかと、プロジェクトの名前をとって「フェイト」と新しく名付けた。
私の研究はふりだしに戻ってしまった。

だが実験のさなか、私は現代医学では不治の病とされる病気を発病してしまった。
もう長い時間など私には残されていなかった。

神は私を見限った

考えてみれば当たり前だ。
人間の命を作るなどという神への冒涜を試みているのだから、裁かれないわけがない。
でも、それでもアリシアに会うまでは屈するわけにはいかない。
神サマにだって負けるわけにはいかない。

それからの私は昼夜を問わず実験のすべてを洗い直し、新たな可能性を求めて思考を傾けていた。
何か少しでもアリシアのためになるのならと、アルハザードなんておとぎ話のような言葉にだって踊らされることも辞さなかった。
ちょうど、鍵になりそうなジュエルシードが管理局の目の届かない次元世界に落ちたらしい。
それを回収する役目をあの子に任せた。
本当は私自身がこの手ですべてを集めたかった。
だが、そんな時間はない。
タイムリミットまで時間がない。
私はひとつでも多くの可能性を試さないといけないのだから。

あの子が帰ってきた。
けれど、持ち帰ったのはたったの数個。
すべてを集めても虚数空間の向こうへと渡れるかが不安だというのに、たったの数個。
これだけで渡ることができるとでも思っているの?
冗談でも言っているのかと思える成果に私は気づけばあの子を口汚く罵っていた。
それは抑えようと思っても止められるものではなかった。

そうだ、これでいいんだ

自分がしていることの非道な振る舞いに自分自身への嫌悪が生まれていたときだった。
この薄汚い行動を肯定している自分がいた。

愛する我が子と同じ姿をしたあの子を蔑むことは、罰なのだから。
自分の愛するものを貶めることで自分さえも傷つけ、苦しめる。
その苦しみをまたあの子にぶつける。
この汚い連鎖が自分に残されたたったひとつのアリシアとのつながり。
犯罪者になってしまった私にはおあつらえむきの見苦しさだった。

研究者を名乗る資格もない。
母親を名乗る資格もない。
たったひとり、プレシア・テスタロッサが望んだたったひとつの望み。

一目でもいい
アリシアにあわせてほしい

そのためだけに、私は自分の体を、心を動かした。
そのためならばどうなってもかまわない。
ボロボロの体なんて今さら知ったことではない。
アリシアに会えるのならなんだってしてみせる。

あのできそこないのフェイトを撃ち落とすことになっても

そう、あの子は雷に打たれた。
私の放った雷を、白い魔導師との一騎打ちの最中に。
後ろから、私を信じ切っていたあの子を。

強烈な罪悪感と共に、判決を終えてから今まで思い出すことのなかったイメージが一瞬で走り抜けた。
あの子の落ちていく姿が、アリシアの最期の表情と重なって見えた。

どうして
私は、アリシアを、私の娘を愛そうとしていただけなのに
同じ姿をしたあの子は弱りきって、今にも消えていきそうなほど儚い
私は、あの子なんて失敗作だと思っていたのに
不要な子だと思っていたのに
どうしてこんなに胸が痛むの……

海に落ちたあの子が管理局に拾われたと聞いた時、私は思わず回線を管理局の担当の船へと開いていた。
映されたのは船のブリッジなのだろう、女艦長の姿が見える。
そのうしろに、一緒に落としたはずの白い魔導師に肩を担がれてかろうじて立っているあの子がいた。

その姿に、私は心が大きく息を吐くのを感じていた。
考えてみれば、簡単なことだった。
あの子は、私が生み出した私のもうひとりの娘だった。

――聞きなさい、フェイト

でも、もう娘なんて呼ぶことはできない

――私は、あなたのことが

私は大罪を犯した犯罪者なんだから

――大嫌いだったわ

願わくば、あなたの歩く道がこの先私の道に通じていないように





あの様子ならきっとあの子はもう戻ってこない。
これでいい、私のことを信じてはいけない。
こんな後戻りができない犯罪者を母親だと思ってはいけないの。

さあ、私にはまだ大犯罪者の汚名を着せられる役目がある。
こんな中途半端なところで倒れてなんていられない。
最後の最後に、私はしかるべき場所で倒れなくてはいけない。
どんなに無様な姿であろうと、この命の炎が消えてしまっても。

崩壊を始めた私の家であり研究所、時の庭園。
巡り巡るカタストロフは私の人生のようでもろく軋み、ただの瓦礫へと姿を変えていく。
たったひとりで行くのも悪くない。
眼下に広がる虚数空間を前にしてそう思う。

いや、ひとりではなかった。

アリシア

私の初めての娘。
今ではこの培養液の中でしか生きていられないけれど、かわいい子。

「母さんっ……!」

こだまする、もう聞くことがないと思っていた声。
それも、ただ私を呼ぶ為に。
けど、私を母だなんて呼んでいいのはもう、ただ一人、アリシアだけ。
もうフェイトから母さんだなんて呼ばれるわけにはいかない。

「母さんは、私の母さんだから……っ!」

どうして、私を母さんだなんて呼ぶの
私はもうあなたのことを愛することなどできないのに……
そうしなければ、あなたには限りない災禍が降りそそぐのに
どうしてあなたはあんなことを言われても私のことを母さんだなんて呼んでくれるの……っ

教えて、アリシア


あぁ、そうか……
来るべき時が来れば、私はもう一度あなたの笑顔に会えたのに……
そんな簡単なことにもっと早く気づけていたら、あの子にもっとやさしくできていたかもしれない

あぁ、私は、いつでも気づくのが遅すぎる……
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